古い旅館を住居として再生し呼吸するまちの歴を呼吸する
昔ながらの町家の区割りに建つ蔵と旅館建築。古いものを残したいと願う若い夫妻と工務店の情熱が、消えかけたまちの文化を守った。
盛岡八幡宮は例祭の山車行列や流鏑馬など数多くの行事で知られ、その参道は江戸時代より町人文化を育み、繁華街として栄えてきた。この歴史ある参道に風情溢れる1軒の町家が佇む。間口5間、奥行き20間(約9×36メートル)という昔ながらの区割りに、蔵と旅館建築が寄り添うユニークな建物だ。
「この参道沿いに住みたくて、5年がかりで出会えたのがこの物件でした」と言うのはTさん夫妻。奥さんは江戸時代の文化・芸能をこよなく愛し、当時から連綿と続く盛岡八幡宮の例祭には、毎年笛や太鼓、唄いで参加するという。
この建物は明治30年代に遊郭として建てられ、長い間旅館として、その後は地下でカフェを営んでいた前オーナー夫妻の住居として使われてきた歴史がある。家の中に橋がかかり、部屋ごとに建具や仕上げが異なるなど、当時の職人の技と心意気が随所に感じられる。