雑誌「チルチンびと」80号掲載「日本の古材」
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57協力・島村葭商店 写真・西川公朗日本の古材Old Japanese Wood今では採れない希少な材を手仕事で磨く そもそも、古材とは何か? 現状では古材を扱う業者により、築50年の材を言ったり70年で古材と言ったり、その定義はさまざまです。明治35年創業の琵琶湖畔の老舗「島村葭商店」では、おおよそ120年以上の材を、古材として扱っています。四代目・島村義典さんによれば古材の良さは、手鉋などではつられた跡や、先人が囲炉裏や竈を使った時の煙が、長い時を経て梁や柱・床板や家具に染み込んで生まれる飴色の輝きなどの表情もさることながら、純粋に木材としての性能・希少性にあります。現在の流通材は戦後、計画的に植えた木を30〜50年ほどで伐採、そして人工的に短期間で乾燥するのが主流。対して古材は、元が天然の山で育った良質な材で、しかも時間をかけ、水分・油分が落ちていくので、材としての安定性も増します。 ただ、こうした古材を住まい手に届けるには根気のいる手仕事が求められます。解体の際、重機によってついた傷、長い間埃を被っていたことによる煤けていねいな手仕事で古材が今に蘇る古民家の状態がよければ、通常は土台まわり以外は再利用できる。ただ、外がきれいでも中が虫にやられていることもあるので、古材の業者など専門家の立ち会いのもと、必ず現状を確認するのがおすすめ。 (作図・鈴木 聡/TRON/OFFice)長い間眠っていた古民家の材は、汚れや傷などもあり、そのまま使えるわけではない。島村葭商店では1本1本状態を見極め、へこんだ傷を自然にならし、表面を削ることで木目を浮き立たせる。さらに油や顔料による古色仕上げを施して完成。梁・柱・板材まで再利用解体材を蘇らせる職人の手仕事①古民家は人力で解体するが、やむをえず重機を使うことも。傷は、手鉋などで自然に見えるよう調整する。 ②全体にホイルサンダーをかけ、埃に隠れていた木目を浮き上がらせる。染み付いた煤が飛んでしまうので、要望がなければ水洗いは行わない。 ③亜麻仁油を塗り込め艶を出す。乾拭きで留める場合もあれば、④のように、古色を塗ることも。 ⑤蘇った古材。写真は木下龍一さんが設計した島村さんの自邸。長い間埃を被っていた古材は、思いのほか煤けている(上・左)。下は、島村葭商店の木材置き場。15234

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