雑誌「チルチンびと」80号掲載「京都府/西山邸」
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35陶板を用いることも。店名の「みたて」は、茶の湯の祖・千利休が唱えた、本来あるべき姿とは別のものに「見立てる」精神に倣っている。もちろん、「古ければいい、というわけでもないと思うので」と、現代作家の器も取り入れる。ただ一見して新旧の区別がつかないのは、西山さんの目に叶うものが、この時を経た町家と、しっくりと合っているからなのだろう。 一般的に流通する園芸種と、和花とりわけ原種では、値段の桁が一つ違う。「けれどもあえてそうした草花を尊び、暮らしの中の美を見出した日本人の感性を大事にしたい」。静かに、しかし力強い口調で語る隼人さん。商業ベースにのりにくい営みだが、隼人さんはほっこりと、軽やかに語る。「京都にはけっこうあるんです、おじいさんとおばあさんがひっそりやっている、小さな店。僕も、この町家みたいな味のあるおじいちゃんになりたいんですよ」。通り庭を道路側に向かって見る。上部は吹き抜けになっていて、古い梁が印象的に架かっている。通り庭にシンクと棚を造り付け、台所に。蒸籠や鍋などの素朴な生活道具が揃う。食器棚の上は神棚にして、お札をずらりと並べている。上:剣山をまな板置きに見立てるのも西山さんたちならでは。「水もよく切れるし、使い勝手がいいんですよ」。 左:おあげさんをじっくりと網で炙って。ほかにも白和えにはすりこぎを使うなど、昔ながらの調理道具をさらりと使いこなす。

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