雑誌「チルチンびと」72号掲載「和箪笥のある愉しみ」
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78さまざまな箪笥生活が豊かになってきたことで使う側の要望も多様になり、さまざまな用途や形をもった箪笥が生まれました。使い手と職人との掛け合いによって出来上がった種々の箪笥を、自分だけの使い方で暮らしに取り入れてみてはいかがでしょう。戸間(5尺8寸×2尺9寸)」、関西では「京間(6尺3寸×3尺1寸5分)」と、畳の大きさが違うため、箪笥の幅も東西で違いがあります。暮らしの中で愉しむ箪笥 現代の家でも、大半は畳の寸法を基準に部屋の大きさが決められています。部屋のどこに箪笥を置けばどう見えるか、ボリュームや雰囲気をイメージしやすいのでしょう。みなさん置き方、使い方に個性が光っています。例えば、玄関に衣装箪笥を置いて、引き出しに仕切りを入れ下駄箱にしたり、上段下段で高さが違う水屋箪笥を横並びに置き、違い棚のように使われている方もいます。 また置く場所に余裕がないという方も、手軽な小引き出しや針箱ひとつ部屋に置くだけで、ぐっと味わいが出ます。 時代が変わっても私たちにとって普遍的な存在である和箪笥。生活の一部に取り入れることで、日本の素晴らしいものづくりの文化を日々発見し、味わえる、そんな時間が暮らしを豊かにするのではないでしょうか。①欅材二重ね時代帳場箪笥②幅97×奥行き45×高さ152(㎝)③250,000円④明治中期~後期/京都⑤商売人が店で使っていた帳場箪笥。通常の帳場箪笥といえばほとんどが高さ100㎝以下の1本物で、二重ねのものは珍しい。これもあつらえものだろう。引戸に細かい横格子があるのが京都の帳場箪笥の特徴。①桑張二重ね時代茶箪笥②幅91×奥行き34×高さ161(㎝)③45,000円④昭和初期/東京⑤茶道具を収納する茶箪笥。上段は、人形を飾るための棚や小さな襖、格子の背板など細かく分かれている。S字の飾り棚は流雲をイメージしたもの。まれにこの奥に月が描かれているものもある。①前欅材鍵付帳場箪笥②幅85×奥行き42×高さ88(㎝)③185,000円④明治中期~後期/福島⑤東北に帳場箪笥は少ないが、これはさらに珍しい欅の玉杢(たまもく)の箪笥。樹齢400年から500年経ったものでないととれない最高級の木目。この木目を生かす木地仕上げが施されている。①総桐材時代刀箪笥②幅111×奥行き32×高さ32(㎝)③59,800円④江戸後期/山形⑤刀を収納していた刀箪笥。上段は刀の本さや、下段は脇差し、下段右の小さな引き出しは刀を手入れする道具入れになっている。①総欅材時代小箪笥②幅60×奥行き37×高さ31(㎝)③45,000円④江戸後期/山形⑤衣装の小物を入れていた手元箪笥。引手に角手がついているものは古い箪笥の証拠。縦横の比率が通常と違うのであつらえもの。天板、側面も欅でできているものは珍しい。

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