雑誌「チルチンびと」72号掲載「京都府/デイビス邸」
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3232直し、継いで暮らすこと【 解題 】デイビス邸 木下さんの方針は、いつも極力ゴミを出さないこと。柱、壁土、瓦、など可能な限り新しい家に使用する。解体・施工は、ジョナサンさんの知り合いの大工、鈴木道広さんが請け負った。 建築中、ジョナサンさんは金物を使わない日本の伝統構法に驚いたそうだ。「日本の家はジョイント(仕口)を先につくってから組み上げる。鈴木さんはそれを頭の中でやるんだ!」。木下さんも同様に、頭の中で架構のイメージをつくり出してから、それに見合った古材を探し出すのだという。デイビ洋風な雰囲気の室内に存在感のある古材が。1階の床もカナダ産のオーク材を使用した。息子さんの部屋。天井も立派な地棟が渡っている。2階廊下。床にはカナダ産のオーク材が使用されている。階段から梁組がよく見える。中央の松梁が新しく入れた古材。階段室築約30年の家に、古材を継ぎ足して再生させる――。古民家に暮らすのが「ドリーム」だったというジョナサンさんに、木下さんがすすめたのがこの方法だ。イラスト/鈴木 聡(TRON/OFFice)リビング・ダイニング玄関ホールス邸では、1階の小梁をリズムよく現した天井、2階には地棟を通し、合掌と陸梁を交互に架ける伝統構法を取り入れ、複数の古民家の古材を組み合わせた。その際、その材がどの地方の古民家で、どのパーツだったのかも考慮。「台所の恵比須柱は、別の古民家でも台所の恵比須柱だったものです。古材には役割があるんですよ」と木下さん。 古民家好きのジョナサンさんの好みに合わせ、新しく取り入れた古材のみを現しとし、もとの家の材は基本的に壁に塗り込めた。壁のペンキ塗りはデイビス夫妻が担当。「昔は村人総出で家をつくったものです。住む人と職人が共同作業し、人と人がつながってゆく。ジョナサンさんとは気脈を通じ合えました。お互い、時間を感じるものが好きなんだね」と木下さんは語る。

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