雑誌「チルチンびと」80号掲載「奈良県/芸家 田中茂雄さんを訪ねて」
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28めに、故きを温めたのだ。時を経たものが放つ息づかいは、時に心を温め、清め、癒やしてくれる。人の心を開いてくれる古き力は、自然とつながった暮らしのなかで培われ、自然と同じように時を経て滋味を増す。 佐智子さんたちが準備してくれた野草料理がテーブルに並ぶ。明日香を愛する友人たちが手料理をもって集まってきた。小さな器を通して、母なる大自然を感じる。野草料理もこの古民家も、然り。うららかな春の昼下がり、明日の香りを広げながら、賑やかな昼食が始まった。快晴の1日であったが、ストローベイルハウスの工房のなかは、ひんやりとした湿り気に満ちた異空間。なぜか安堵に包まれる。右:家にあった古瓦、李朝の建具などを使って新築した工房。古材を使うことで、古民家の中庭になじんでいる。 左上:人力の蹴轆轤は、向きや速度をすぐに変えられるので、ていねいな成形ができる。粘土の塊から、魔法のように碗が生まれる。 左:畑に築いた穴窯と、地元の造園屋さんから譲り受けた大量の薪。こんどう・なおこ/医学書出版社に在籍後、フリーに。大和高原に暮らしながら、民俗学を中心にノンジャンルの取材と執筆活動、音楽活動を行う。「webチルチンびと広場(http://www.chilchinbito-hiroba.jp/)」で「七代先につなげたい、先人の心」を連載中。PROFILE

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