雑誌「チルチンびと」74号掲載「京都府/石井邸」
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らしへの配慮も怠らない。 この日は石井さんと、手仕事の道具をデザインする奥さんのすみ子さん、そして安田さん夫妻の4人で囲炉裏を囲み、賑やかな午餐を。囲炉裏の網で炙られるのは、新鮮な地鶏に色とりどりの地元の野菜。舌鼓を打ちながら、焼き物に建築談義と花が咲く。新鮮な地場の食材を炭で炙り、塩やカボスなど素材を生かした味付けでいただく。素朴でありながら、最も豊かな食のかたちではなかろうか。 ところで石井さん、囲炉裏にはいくつか思い出があると言う。そのうちの一つが、「僕は、囲炉裏に救われたんですよ」。陶芸を模索していた若かりし頃、気持ちが萎縮していた時期があった。「がーっとトラックを走らせて」沖縄に行き、彼の地で世話になった陶芸家がつくっていたのが木のピラミッド。「その中には、囲炉裏が切られていたんです。それを見たとき、縛られていたものから開放されたような思いがして」 囲炉裏には人を癒す原初的な力があるのでは……と、石井さん。長い間、日本人の住まいと暮らしを支えてきた囲炉裏。その確かな営みの姿に、私たちは最後に還ることができる場所を見出すのかもしれない。右ページ、左上から時計回りに /石井さん夫妻(手前)と安田さん夫妻で、囲炉裏を囲んで昼食を。 /秋のクリをあしらった炭。 /「灰には山の精が宿っているんですよ」と石井さん。 /地鶏や丹波の野菜を炙って。 左ページ、左上から時計回りに /赤らむ炭にごちそうへの期待も高まる。 /鴨居を利用した炉縁をはじめ、安田さんの創意工夫溢れる囲炉裏。 /焼き加減をみる石井さん。29

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