雑誌「チルチンびと」74号掲載「京都府/石井邸」
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り手の魂が投入されている。その姿勢を、今につなげていきたいんです」 雑木林を背にした広い敷地に、まず小さな方ほう形ぎょうの庵、次に登り窯を建て、土を捏ねながら暮らしを営む場として滋賀県より築150年の古民家を移築した。移築・改修を手がけたのは、友人である建築家の安田勝美さん。「職住の場は、どちらからともなく、新築よりも古民家がいいと言い出して」 安田さんが信頼を置く滋賀の古材屋・島村葭よし商店をともに訪ねた折に、とある解体中の茅葺き民家が目に留まった。「大事に住まれていたことがわかりました。その気持ちも引き取りたかった」と石井さんは心を決めたきっかけを振り返る。暮らしを支える二つの囲炉裏 この民家は湖北に見られる伊香型という、入母屋造りの茅葺き屋根をもつ形式。そして安田さんによれば、「骨組がしっかりしているので、間取りを自由に変えられる良さがあります」 骨組や民家の空間性は尊重しながらも、プランは現代の生活に合外から見た囲炉裏の間。「このテラスから景色を見ていると気持ちが安らぎます」と、奥さんのすみ子さん。作業場の囲炉裏から昇る煙が、ゆったりとたなびく。まっすぐ外に視線が抜ける、囲炉裏の間。部屋のコーナーを斜めにカットし遠近感を生み出す。蚕棚をアレンジした照明には、石井さんが好きなハイデッガーの一節を張っている。27

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